【本の感想】ネタバレなし「六人の嘘つきな大学生」情報の危うさ

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「あの人って、こういうことしてるんだよ」。真偽不明の噂でも一度聞いてしまえば、相手を「そういう人だ」と見てしまいます。SNSで切り抜かれた一言や、職場内で囁かれる陰口。表と裏の情報を手に入れて、相手の全てを知った気になっていたことはありませんか?二つの視点の情報だけでは、本当のことはまだ見えていないかもしれません。自分は情報を取捨選択する目を持っているのか?「六人の嘘つきな大学生」で、ぜひ体験してみてください。

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「六人の嘘つきな大学生」は、浅倉秋成さんによる就活ミステリーです。ブランチBOOK大賞2021で大賞、2022年本屋大賞で第5位を受賞し、映画化もされている作品です。

舞台は、急成長するIT企業「スピラリンクス」の新卒最終選考。選考に残った6人に与えられた課題は、1ヶ月後までにチームを作り上げディスカッションをするというもの。全員で内定を得るため6人で準備を進めていくが、本番の直前に課題が変更される。「6人の中から1人の内定者を決める」こと。つい先ほどまで仲間だった6人が、ひとつの席を奪い合うライバルに変わる。内定を賭けた議論が進むなか、6通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を開けると、それぞれの秘密を暴く告発文が入っている。彼らの嘘と罪とは?犯人は誰なのか…。

最終選考の場で自分の罪が暴かれれば、それは脱落を意味します。自分の努力が一瞬で蹴散らされるほどの罪を、一体誰が何のために調べ、このタイミングで表に出してきたのか。そんなミステリーをベースに、6人が情報に翻弄される状況が描かれています。1ヶ月交流をした相手よりも、出どころ不明の「裏の顔情報」を本性だと信じてしまう。「誰かに騙されたくない、本当のことが知りたい」と渇望する私たちは、安易な理解で、全てを知った気になっているのかもしれません。

封筒の中身を知るたびに、登場人物たちを軽蔑せずにはいられませんでした。その情報が本当なのかは二の次で、「裏の顔です」と出された情報を信じてしまう。読み終わったときは、簡単に手に入る情報の危うさや、先入観の怖さに気づかされました。私も6人と一緒になって、情報に翻弄されていた…。物語を追いかけているうちに、無意識に「書かれた内容=事実」だと思い込んでいました。最後まで読むと、切り抜かれた一面の怖さを、深く考えさせられます。

これは本の話ですが、現実でも同じことが起きます。誰かの良くない情報が回ってきたとき、「その話の内容は事実だ」という前提で話を聞いていませんか?真偽不明の噂ほど周囲に受け入れられ、気づけば色眼鏡で見ている。本当のことを話す機会すらもらえなければ、噂が事実として拡散されていくのです。

一部だけ見ればそう見えるのに、視野を広げて見れば、まったく違う景色が広がることもあります。

・職場の噂で語られる一面
・切り抜かれた一言
・失敗した日の一コマ

マイナスの一瞬だけを集めて、「この人はこういう人」と決めつけで見られてしまう。ですが、こぼれ落ちた情報にこそ、語られなかった真実が隠れていることも多いのではないでしょうか。人間の「評価」はあいまいで、手に取る人によって、万華鏡のように姿を変えていくのかもしれません。大学生の就活ミステリーを描いた作品ですが、理不尽な評価をされたことのある大人にこそ、手に取ってほしい一冊です。

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