自分の気持ちが重くなっているときは、「元気を出そう」系の本は眩しすぎて手に取れない。そういうことじゃないんだよ…と卑屈になってしまった経験はありませんか?鬱々とした気持ちのときは、暗い話の方が自分の気持ちに寄り添ってくれる気がする。そんな感覚になる方に、ぜひ読んでほしい一冊があります。
私は、職場でうまく馴染めず鬱々としていた時期に、「暗いところで待ち合わせ」を読みました。タイトルも表紙も暗いし、あらすじを読めばサスペンスのよう。でも読み終わった後、じんわりとあたたかい気持ちになりました。「自分の足で一歩踏み出す」希望と温かさをくれた一冊です。
「暗いところで待ち合わせ」とは
「暗いところで待ち合わせ」は、乙一さんが書いた小説です。2002年に幻冬舎文庫から刊行され、映画化もされています。全262ページのため、休日の2〜3時間でサクッと読めるところが魅力です。
主人公は二人。視力をほとんど失い、ひとりで静かに暮らす女性・ミチル。そして、職場いじめに耐え続け孤立していた男・アキヒロ。殺人事件の容疑者として逃走中のアキヒロが、ミチルの家に逃げ込んだことで物語が動き出します。
ミチルは「誰かいる」と気づきますが、気づかないふりをし続ける。アキヒロは部屋の隅に座っているだけで何もしない。言葉も交わさない、音のない世界。お互いの名前も知らない。だけど、同じ空間で過ごすうちに二人の心の距離が縮まっていく。暗闇の中でろうそくの火が小さく揺れるような、そんな雰囲気の物語です。
この本との出会い
転職先の職場に馴染めず、人間関係の輪にもうまく入れない。疎外感や孤独感を感じ、毎日の空気が重く暗く感じていた頃。なにか本を読みたいと思ったものの、「明るい・ポジティブ」系の本を受け入れる気力はなく。むしろ暗い本の方が、自分の重い気持ちを肯定してくれるように感じました。
そんなとき、手に取ったのがこの本。タイトルも表紙も暗く、「暗い本」を求めていた私の心に刺さりました。ミチルとアキヒロ、二人が感じている孤独感や疎外感、家の中の閉塞感が妙に心地よく、引き込まれるように読み進めていきました。アキヒロの職場で居場所がない雰囲気や追い込まれ方が妙にリアルで、ページをめくる手が止まりません。

暗くて音のない空間に、ほんの少しの温かさ。「このままでもいいのかも…」と、孤独ごと受け入れてくれるその場所に、居続けることを望むような感覚になります。
後半で一気に視界が開ける
ですが後半、物語は一気に動きます。
光や風を感じ、視界が開けていくような感覚です。読後感は、希望と温かさ。タイトルや表紙からは想像もできない感情の着地点。「自分の足で一歩踏み出せば、未来に繋がる」。そんな、晴れやかで温かい気持ちになれる作品です。
小さな温かさが光になる

気持ちが重くなって、周囲の景色がくすんで見えているようなとき、ほんの少しの温かさが自分を救ってくれることがあります。その温かさは、家族や友人、はたまた一冊の本からもたらされるのかもしれません。疲れているけど、誰かと話したいわけじゃない。この重い気持ちを肯定してほしいけど、ほんの少し心に温もりも感じたい。
そんな人は、ぜひ一度手にとって、空気が軽くなる感じを体験してほしい一冊です。



コメント