【体験談】「気づいた人がやる」ルールで雑用が私に集中した話

「雑用は気づいた人がやる」は、平等で気持ちのいいルールに聞こえます。ですが、いつの間にか同じ人だけが雑用をやっている。そんな職場に、心当たりはありませんか?このルールの本質は、善意と平等の皮を被った搾取システムです。

この記事では、10社以上で働いてきた社会人歴20年以上の私が、「気づいた人がやる」ルールの理不尽さを、体験談をもとにお伝えします。読み終える頃には、この仕組みの本当の姿が分かり、自分の立ち位置が見えてきます。「いつも私だけが気づいてしまう」。モヤッとした想いを抑え込んだことのある人は、ぜひ読んでみてください。

目次

「雑用は気づいた人がやる」。中途入社した会社は、このルールを取り入れていました。女性事務員が9人もいるので、一人あたりの量は多くなさそう。当時の私はルールをポジティブに捉え、「気づいたらやる」というタイミングについても素直に守っていました。

コピー用紙が減っていないか。文房具の在庫は足りているか。流し台に、誰かの使ったコップが放置されていないか。雑用が「仕事」なのか「パシリ」なのかも深く考えず、見つければサッと対応。早く会社に馴染むため、周囲と良好な関係を築くため、気がきく事務員だと思われたいため、積極的に手を伸ばしていました。

仕事を覚えていないうちはできることも少ないため、この雑用も私にとっては立派な仕事。周囲に気づかれなくてもいいし、「ありがとう」と言われれば、役に立てた高揚感で嬉しさが溢れました。

入社から3ヶ月以上経つ頃には、自分固有の仕事に加え、来客対応や電話対応で手一杯。目の前の仕事をさばくことしかできず、毎日すみずみまで雑用に目を配る余裕はなくなっていました。ルールどおり「気づいたらやる」くらいの頻度。他の事務員より少し量が多い程度でした。

コピー用紙が切れてエラー音が鳴る。青ボールペンがない、ポットのお湯が少ない、と営業からの声。そんな声をちらほら聞くようになった頃、「最近、全然まわりが見れてないんじゃない?」と、直属の先輩から指摘されました。気づいたらやるルールなんじゃ…?という気持ちとは反対に、「すみません」と反射的に答えました。不思議なもので、先輩は「気づいたらやる人」には含まれていないような言い草。あなたの仕事と言わんばかりの指摘でした。

「雑用は気づいた人がやる」ルールを真っ直ぐに受け止め取り組んだ結果、「雑用はふーともさんの仕事でしょ」になっていました。「あの人がやってくれるから」だったはずが、「あの人がやらないから」に置き換わる。周囲がそう認識してしまうと、雑用はその人の固有の仕事になるのです。

2回以上手伝うと危険

過去に同じような経験がある人は、立ち回りが賢いのです。たまに雑用をやっても、短期間に2回以上やることはありません。「あの雑用は、あの人の仕事」と勝手にラベリングされると、固有の仕事になることを知っているからです。

一度そのポジションにハマってしまうと、抜け出せる日は簡単には訪れません。事務員はめったに入れ替わりませんから。

「気づいた人がやる」は、気を使う人や真面目な人に雑用が集中してしまうルールです。いつも同じ人が気づいてしまう状況を生み出し、いつの間にか「あの人の仕事」と認識されるまでが一連の流れ。

そして、新人も搾取される側になりやすいポジションです。当番制ではない職場の場合、ルールに則りつつも雑用を多めにこなし、少しずつ仕事を覚えていく。できる仕事が増えてきた4ヶ月目以降は、雑用の量が周囲と同程度になるのが一般的です。しかし、いつまで経っても雑用の量が減らないどころか、これからも積極的にやるよう暗に指示されることも。

・一番後輩なんだから
・まだ他の人より仕事できないんだから
・雑用で仕事を覚えるんだから

このような理由で、「だからあなたが雑用をやって」という暗黙の指示を出されます。素直に受け入れて続けていると、いつの間にか「あの人の仕事」になり、一年経っても抜け出すことができなくなります。

一度ハマってしまうと逃げられない、アリ地獄。「気づいた人がやる」ルールは、気づかない側に運よく回れた人たちが、絶対に手放したくないルールなのです。

ルールが善意か都合か判断する方法

「気づいた人がやる」ルールを負担に感じたら、「当番制にしてみませんか?」と提案するのもひとつの方法。全員に順番がまわるため、公平なルールです。

雑用の量が意図せず偏っていた場合、拒否されることは少ないかと思いますが、逆の場合は現状維持を求める声が上がります。「嫌です」と正面からの拒否ではなく、やんわりとかわされます。雑用をメインでやっている人は現状維持を希望しないのに、やっていない側は希望する。

・別に今のままでいいんじゃない?
・特に不便を感じたことはないし
・仕事に波があるから、当番制は厳しい

このルールは善意なのか、やらない側の都合なのか?この一言こそが、答えです。

「当番制にしませんか?」この一言のハードルが高すぎる。そう感じる方は、自分だけでできる小さな一歩から試してみましょう。まずは「雑用を反射的にやらない」こと。声をあげずに、一人ですぐに試せる方法です。

一つ目は、見かけてもすぐにやらないこと。コップが流し台に放置されていても、すぐに飛びつくのをやめて、少しだけそのままに。数時間後にまとめて洗いましょう。そして「毎回すぐには洗えなくて。放っておくと茶渋も残るし、どうしましょう?」と、困り事ベースで相談します。拒否ではなく、相談として周囲に伝えます。角を立てず「私ひとりの仕事じゃないですよ」という事実を、暗に伝えていく方法です。

二つ目は、率先して行動しないことです。「誰かやっといて」と営業から声が飛んでも、反射で立ち上がらず、他の事務員のように黙り込む。誰も動かない場合は、「◯◯が終わってからでよければできます。◯時頃になりそうですが、大丈夫ですか?」と、時間を明確にして返してみましょう。多くの場合、自分より早く対応できる人がいるので、そちらへ自然と話が流れます。「あの人がやって当然」という前提を、少しずつ崩していくのです。

今まで反射的に動いていたことを、一拍置いて動く、に変えるだけ。この小さな一拍が、「あの人がやって当然」というラベリングを防いでくれます。もちろんこれらは魔法の言葉ではないので、変わらない相手がいることも忘れないようにしましょう。

それぞれの性格や立場を利用して、暗黙の了解で雑用係を決める職場は健全とは言えません。業務を効率よく進めるため、みんなで協力することが本来の職場のあり方です。提案で改善することもあれば、現状維持のままであることも。声をあげてみたり、いつもと少しだけ違う行動をすることが、変化のきっかけになります。

職場やメンバーによって、雑用への取り組み方や意識は違います。現状維持を望まれたときは、自分の給料で、このメンバーから押し付けられる理不尽を受け止めることができるのか、寝る前に一度だけ考えてみてください。相手にとって都合のいいルールの中、不利な立場でこれからも働き続けるのでしょうか。自分を尊重してくれる人たちと働きたいと思うことは、決して逃げではありません。自分がより良い未来へ進むため、考えて行動できるのは、自分自身なのですから。

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